昨夜、病院のロビーに泊まったHiromi は、今朝病室で一緒にハーブティーを飲み、i phone に充電してから、家路へと着きました。
無事に帰り着いたとの連絡にほっとしました。
私は今日外出許可をもらっていて、我が家の猫達に会いに帰る予定でしたが、あまりに大きな地震だったので、お迎えの友人のことも考え、明日に延期しました。
明日が待ち遠しい私です。
夕方、Francisco から電話がありました。
「地震、大丈夫だった?」と、ひとこと。
中国からの電話にしては声が近いような気がしました。
すると、「日本に帰ってきたからさ、明日病院に行くよ。」と言うのです。
「えっ? なんで帰ってきたの?」と私。
「地震のニュース聞いたからさ。」とFrancisco 。
「…う〜ん、心配して帰って来てくれたのに悪いんだけど、明日は来なくていいわ。」
「なんで?」
「ごめんね。…明日は猫達が心配だから家に行ってくる予定なの。」
「誰か送り迎えしてくれるの?」
「お友達がお昼過ぎに来てくれることになってるの。」
「わかった。じゃ、明日かあさっていくよ。」
せっかく飛んで帰って来てくれたのに、本当にごめんね。
君は優しい息子だね。 ありがとう!…と、口に出しては言えなかった私です。
Masayo とも連絡がつきました。 電話がなかなかつながらず心配していたのですが、無事の知らせです。
地震があった時は会社にいて、数分の差で倒れてきたキャビネットの下敷きにならずにすんだそうです。
帰りは日本橋から渋谷まで、何時間もかけて歩いたそうです。
かわいそうに、どんなに怖い思いをしたことでしょう!
家にはアンナ、マリナ、ムムの3にゃんが、無事に待っていてくれたそうです。
みんな無事で良かった。本当によかった。
Ryoko 一家も皆無事でした。
小さなベビーがいるので、本当に心配していましたが、ひと安心です。
Madoca さんからもメールが来ました。
やはり仕事場から歩いて帰ったそうです。
お家の中はガラスが割れてめちゃくちゃだったそうですが、ロシアンブルーのライライちゃんは怪我もなく無事だったそうです。今日はずっと抱っこしてました、と。…
大地震のニュースは世界中を飛び交っているようです。
TVは、どのチャンネルも地震速報で、甚大な被害を知らせています。
病室にいると外の様子は目にしないので、実感が湧かないのですが、TV画面を見ていると、まるで悪夢のようです。
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~~~~~ターキッシュアンゴラとの出会い 5 ~~~~~
翌日はお昼近くまで眠ってしまいました。
深い眠りから、心地よい目覚めへと導いてくれたのは、ダイアナの優しいタッチでした。
私の胸に前足をそっとのせ、パジャマのはだけた襟からのぞく私の肩に、ガチガチと小さく小刻みに歯を当てて、軽く噛むようなタッチです。
甘い痛みに目を開けると、私はダイアナを抱き寄せ、仰向いて、彼女を胸の上に乗せました。
ダイアナは、香り箱のポーズになり、目を細めました。
幸せな目覚めです。
旅は私を、取り巻くすべての現実から解き放ってくれます。
解き放たれた心は、新鮮な風と光を浴びて若やぎ、健やかな姿を取り戻します。
だから私は旅が好き!
異国の地で目覚める初めての朝は、まるで生まれ変わったように何もかもが新しい!
それだけでも嬉しいのに、まるでガーディアンエンジェルのように、ダイアナが寄り添い、優しく起こしてくれるなんで!
胸の上のダイアナの重みを、心地よく感じながら、もう少しベッドの中で過ごしたいと思いました。
その時、メイドの Sonia がドアをノックして言いました。
「ドナ・ソフィア、ドナ・マリアからお電話です。」
受話器を耳に当てると、Maria の弾んだ声が聞こえてきました。
今から迎えに行くので、支度をして待っているようにと言うのです。
Sonia が淹れてくれたコーヒーを飲むと、私は急いでシャワーを浴びてローブを羽織り、軽くメイクして髪を纏めました。
着替えが終わるか終わらないかのうちに、Maria の声が玄関のほうから聞こえてきました。
昨日のレストランでランチを食べてから、ポルトを案内してくれるそうです。
雨上がりで少し曇っていたけれど、雲の切れ目から差し込む光は、やがて晴れ渡る空を予感させました。
雨粒に光る緑が美しい町並みを通って、Maria の車は大学に着きました。
車から降りると、石畳の歩道をこちらへと歩いてくる、背の高い Manuel の姿が見えました。
ウィークデイはほぼ毎日のように、大学のレストランで待ち合わせ、長いお昼休みを二人で過ごすのだそうです。
車を降りた私達に気づくと、Manuel が遠くから手を振りました。
「ずっと恋人同士のようね。うらやましいわ。
私の夫は、結婚したら毎朝朝食をベッドに運んであげるよ、と誓ったけど、その誓いが守られたのは2日だけよ。
そして息子が3歳になる頃には、私の心の辞書から、恋というスイートな言葉は消えてしまったわ。
少なくとも夫に対してはね。」
「私達もかつては恋人同士だったことは確かね。
でも、恋愛の幸福というものには必ず終わりが来るわ。それなのに、悲しみには終わりがないわ。セラヴィー、ソフィー(それが人生よ。)」
Maria はフランス語を少し混ぜて応えました。
私は、彼女の言葉がそのまま歌詞になっている、"Felisidade"という歌を思い出して、そのフレーズを口ずさみました。
♪悲しみには終わりがない、幸せにはあるのに♪
Maria もその歌を知っていたのか、それとも覚えやすいメロディーだったからか、私の手を取って復唱して歌いました。
♪Tristeza nao tem fin, Felisidade sim ♪
まるで仲良しの女子高生のように、私達は手をつないで歌いながら、雨上がりの歩道を歩きました。Manuel の方へと。…
美味しいランチを終えて、食後のエスプレッソを飲みながら、Maria が私に尋ねました。
「午後は休講にしたので、あなたの行きたいところをリクエストしてちょうだい。Manuel が運転してくれるわ。彼は午後の仕事に戻るから、時間になったら私達は車を降りてタクシーを使いましょう。そのほうがあちこち自由に見て回れるわ。」
デミタスカップを端に寄せて、Manuel がポルトのマップをテーブルに広げました。
「ドナ・ソフィア、どちらへご案内いたしましょう。,いずこなりと仰せのごとく。」
わざと慇懃に尋ねるManuel に、私も慇懃に答えました。
「ポルトの歴史地区が世界遺産であることは存じ上げています。ぜひその地区を見たいのですが、それだけでは不足です。ガイドブックに導かれるままの旅はいやなのです、セニョール・ドトール。
私が関心ある場所は、美しい教会、美しい庭、美しい海岸です。そのほか、私が言ってみたい場所がいくつかあります。
アンティークショップ、本屋さん、ペットショップ、動物病院、そしてもし案内していただけるなら、…お墓。」
「お墓ぁ!?」
ふたりは目を丸くして、大声で聞き返しました。
「以前夫の海外赴任先に住んでいた時、お墓があまりにも美しかったので感動したの。
私はここに埋葬されたいと思ったほどよ。
私は日本の寂しいお墓がどうしても好きになれないの。昨年父が亡くなって、先祖代々のお墓に埋葬した時、ますますその思いがつのったの。冷たく光る四角い墓石のまわりは、低い石の塀で囲いがあり、墓石の両脇にお対の植木が植えられているの。そこは私にとって、お線香の匂いとともに、寂寥感が漂う場所なの。
私は、花が咲き乱れ、天使が翼を広げている彫像のお墓で眠りにつきたいの。愛するペット達と一緒にね。」
ふたりは顔を見合わせて、くすっと笑いました。
そしてManuel が言いました。
「ミーニャ・フィリーニャ、あなたはなんておかしな人だろう!なんてかわいい人だろう!」
ミーニャ・フィーリャ、とは、私の娘、という意味です。
ニャという語尾をつけてフィリーニャになると、小さい、とか、かわいい、とかの意味合いが強まります。普通は子供や若い娘さんなどに、親しみをこめて呼ぶ時に使いますが、お墓リクエスト以来、私はマヌエルに子ども扱いされるようになりました。
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ターキッシュアンゴラとの出会い 6 はまた明日